みなさま毎度です。
ALC snowboard で設計・開発を担当している Y です。
今回は、よく聞かれる
「ALCの名前の由来って?」「どうやってあのプレート構造に行き着いたの?」
このあたりを技術者の視点を交えながら、そして少し裏話も交えつつお話しします。
ALC という名前、実はめちゃくちゃシンプルなところから来ていて、プレートに用いられている素材の名前から来ています。
...もうお気づきですよね?(笑)
そう、「AL=アルミニウム」 「C=カーボン」 の略なんです。
「え、そのまんまやん!」と思ったあなた、正解です。
でも実は、このシンプルさこそがブランド思想のコアなんです。
アルペン用プレートは一般的に、モデルやグレードごとにフレックスやトーションの特性が固定です。
しかし、私たちはこの「固定された特性」という前提そのものに疑問を持ちました。
なぜなら、雪面状況・斜度・スピード域・ライダーの体格やライディングスタイルによって、求められるプレート特性は常に変化するからです。
にもかかわらず従来のプレートは「仕様が決まった一枚」であり、セッティングの自由度が極めて低いです。
そこでALCでは、“1枚のプレートで特性を可変化する” というコンセプトを設計思想の中心に据えました。

可変構造の核となっているのが、現行のRC15・CH7にも搭載されているカーボンシャフト機構です。
カーボンは以下の特性を持ちます:
・高比強度 (同じ強さを出すのに必要な重量が少ない)
・高弾性率 (曲がりにくくて硬い)
・引張強度が非常に高い (ちぎれにくい・折れにくい)
この素材特性を利用し、シャフトの本数によって縦方向(フレックス)の強度を、
配置位置によってねじり方向(トーション)の強度を制御できる構造を採用しました。
これは、単なる硬い・柔らかいの切り替えではなく、
「プレートの弾性挙動そのものを、構造的に最適化できるシステム」になっています。
プレートを1枚で完結させず、複数のシャフトと組み合わせることで、
剛性マップをライダー側で作り変えられるのがALCの大きな特徴です。

メインプレートなどの金属部分にはジュラルミン(アルミ系高強度合金) を採用しています。
ジュラルミンは以下の特性を持ちます:
・軽量 (鉄の3分の1ほどの重さ)
・鉄に迫る強度
・良好な切削性 (機械で削りやすい)
・高い寸法安定性 (温度・湿度などによって形が変わりにくい)
を同時に満たす、構造材として非常に優れた金属です。
さらにALCでは、釣具事業で培った高精度切削技を応用しています。
釣具のリールは、ごく小さな振動も逃さない精密さが求められるのでミクロン単位の精度が要求されます。
そのリールパーツを加工する工作機械と検査装置を用いて、ALCプレートも 同精度・同品質基準 で製造されます。

プレートは単なる補強部材ではなく、ライダーの入力と板の反応を最適化するインターフェース だと私たちは考えています。
だからこそ、状況に応じて可変化できる構造、高精度で安定した加工、そして素材特性を最大限に活用する設計が必要でした。
ALCが目指したのは、「乗り手がプレートの性格を決められる」という新しいプレートのあり方。
その実現のために、カーボンシャフト構造と精密ジュラルミン加工という
2つのをアイデアを組み合わせたのが、現在のALCプレートなのです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
このコラム初めてまだ第2回ですが、書きながら熱くなってしまいました(笑)
ALC(AL × C)という名前は単なる略称ではなく、
「素材の特性を最大限に活かし、滑りの本質を作る」
というメッセージそのものです。
カーボンが持つ鋭い反発力、アルミが持つリニアなコントロール性。この二つを理想のバランスで共存させ、どんな状況でも描きたいラインを描ける道具にする。
弊社社長の翠川が描いたその思想をもとに、私は設計・試作・テストという一連のサイクルを繰り返し、ALCらしい滑り心地へと仕上げています。
(ちなみにYは家でご飯食べているときも、風呂の時もプレートや板のことを考えています(笑))
これからも素材と構造の可能性を広げながら、ALC独自のモノづくりを届けていきたいと思います。
